φコラボページの拍手で使用した御題作品。


「Web拍手で3つの御題」

Title Creat by ソラノムクロ・夜月りょう

(06'~07')
 【秋・冬】

  @夕焼け色

  A冷えゆく世界に抱かれて

  B友待つ雪

   灯庶闊・拶文

 【夏】

  @海鳴

  A蝉時雨

  B朝顔の観察日記

   灯庶闊・拶文

 【冬】

  @ストーブ

  Aこたつ

  Bカイロ

   灯庶闊・拶文(ログ紛失)



(08'~)
【春】

 @桜の木の下

 A謝肉祭

 B光る風の色

  灯庶闊・拶文

【夏】

 @サマードリーマー

 A向日葵

 B夏のしわざ

  灯庶闊・拶文

【秋】

 @秋よ(ログ紛失)

 A月にうさぎ(ログ紛失)

 B曇夜に浮かぶ

  灯庶闊・拶文

















































@夕焼け色


 それは…僕が言うのも何だけれど、どこにでもあるような光景だった。
 誰でも一度は目にしたことがあるだろうそのオレンジ色は、けれど僕の目には一体どう映っていたのだろう?


 川沿いの堤防の上を歩く僕たち。
 彼女は僕の隣。
 いつもの位置でいつものように前を向きながら僕に話しかけている。
   僕は彼女の隣。
 いつもの位置でいつものように自転車を押しながら彼女に歩調を合わせている。
 時間は夕闇が迫る手前。
 沈みかけた太陽が、ゆっくりと街を染め上げる時刻。
 普通の帰り道。
 いつも通り。
 この瞬間がずっと続くかのような久遠の中で、けれどこの夕日が沈み行くようにその時間はゆっくりと終わりを告げていた。
「きれいだね。」
 彼女がそう言って見上げた先には、今まさに世界を飲み込もうとする太陽の姿があった。
「あぁ。」
 街を染め、赤く紅くあかく。そしてゆっくりと闇の中へ沈んで行く。
 僕らの歩みが止まらないのと同じように、太陽もまたゆっくりと消えていき、そして闇の支配が始まる。

 いつもの光景だった。
 いつも通り過ぎて、それが寂しかった。
 今見た全てが、この時ゆうやけが見せた幻だと闇が教えてくれたからだ。


 僕の隣に もう 彼女はいない
   



+end+
2007.12.02
















































A冷えゆく世界に抱かれて


 まだ先だと言うのに、ウィンドウにはクリスマスカラー。
 節電を掲げられたファイバーの電飾が眩し過ぎるほど幻想的で、異様な世界を作り出していた。
 彼女もいない、そんな俺にとってはむしろ嫌味すぎるぐらいで…俺はこの街を見るのが嫌いだった。
 三十を過ぎても尚、フリーターに甘んじその日暮らししか出来ない俺を、この電飾はきっと笑っているのだろう。
 それでもそれを目当てに来る客が多いのが、俺の気分をさらに落ち込ませていく。
“今だけだ。そんな物を見て幸せでいられるのは。今だけなんだよ。”
 すれ違った若いカップルに心の中で投げかけ、これはあまりにも皮肉すぎたと自分で反省した。
 こんな嫌味な奴にいつからなってしまったんだろうか、と心底驚いた。
 だんだんと冬に向けて寒さを増すこの街は、俺の心さえ凍えさせていくのだろうか。
 彼女の消えたあの日から今日まで。
 それでも僕の隣は彼女の為に空席のままにしてある。
 彼女が還ってきてくれるなら、いくらでも凍らされてあげるのに。
 帰るべき家へ向かいながら、今日もまたそんな事を考える。
 

 帰る場所は…果たして本当にあっただろうか?



+end+
2007.12.02
















































B友待つ雪


 今年、一片の雪が降ったのは十二月三十一日の事で、私は私の涙が降ってきたのだと思った。

 体調を崩し始めた去年のクリスマスから無事に一年が過ぎ、生きる希望が沸いてきた矢先、余命という鋭いナイフで絶望を切りつけられた今日。
 涙も無く分かれたあの人は、きっとそれでも私をあきらめてはいないと思う。
 一生治る事は無いとわかって付き合いだした私たちは、それでも死ぬことは無いと思っていたのに…
 けれど私は、この学生生活が終わるのを待たずに消えていくことになるみたいだった。
 実感は無い。
 あるのは漠然とした恐怖だけだった。
(一緒に恐怖と相対してやるよ。)
 そう言ってくれたのは彼だったけれど、それを本当にやってしまえるのが彼だったから、それが私には怖かった。
 傷つけてしまうのがわかっていて、私だけ幸せに逝く事なんて出来ない。
 他の人生を、幸せに送ってほしかった。
 私の隣に、もう彼は要らない。
 笑って言ってやったのに
(それでも、僕の隣には君しか要らないよ。)
 彼の言葉はナイフよりも鋭くて、綿アメよりやわらかくて甘い。
 涙は出なかった。
 その代わり、一片の雪が降った。
 私は私の涙が降ってきたのだと思った。

 しばらくして私は死んだ。
 あっけなく死んだ。
 苦しんだといえば、苦しんだ。
 けれどその苦しみより、隣が空いた苦しみの方が痛かった。

 一片の雪はやがてたくさんの雪と成り…溶けていった。
 その年の大雪は記録的だったそうだ。
 私が涙を多く流さずにいたからだろうか?
 この世にいない私にはもうわからない。
 ただ、彷徨う彼が早く幸せになればいい。
 切にそう願う。


 あの時降った一片の雪、友待つ雪は私の手のひらであっけなく溶けていった。
 友を待つことも出来ずに。
 私は、何か待てたら消えずにすんだだろうか?



+end+
2007.12.02
















































拍手挨拶


(side:A)

唯 続ける事。

 拍手ありがとうございます。
 初めましてな方は初めまして。そうでない方はこんにちは。
 ソラノムクロです。
 暑すぎた夏もほぼその姿を隠し、いよいよ秋。そして冬の訪れがやってまいりました。
 いつの間にかこのHPも開設して二年が過ぎました。
 早いものです。
 約500名の方々が御来項くださって、感謝しております。これはマジで。
 
 最近よくこう思います。
 今は大人と子供の境目の中途半端な位置にぶら下がっている。
 だから、「最近の子供は…」だとか「これだから大人は…」だとか言ってもいられます。
 けれど、自分が“おとな”って奴になった時、今のこの気持ちを果たして覚えていられるのでしょうか?
 生きる事が苦しくて、みんなと同じが出来なくて、波にも乗れない、流されて流されて、もういいやって自暴自棄になって、それでもどうにか人間として生きていたいと必死であがいている今の自分を、そして、そんな人間が沢山いて、同じかそれ以上に苦しんで、でもとりあえずも生きているんだということを、覚えていられるでしょうか?
 大人は子供の気持ちが理解できないと言い、子供は大人は何も解ってくれないと言う。
 それはそんな事も大人になってしまえば忘れてしまうからでしょうか?
 大人の大変さ、大人になって解る苦労。
 そんなものが、子供の心もわからない人間に育て上げてしまうのでしょうか?
 未来の私たちへ
 今の気持ちを、今の苦しみを、少しでも覚えていれば…
 私たちは次の世代の子供たちを、もう少し、理解して一緒に進んでいけるのでしょうか?
 どうか、少しでも忘れないようにしたいものです。
 

秋風に心奪われながら。

*******************************************************************


(side:B)

今だけが苦しいわけじゃない。

沢山の拍手ありがとうございます。
この後はりょうにバトンタッチします。続けて楽しんでいただけると、そして拍手しまくっていただけると幸いです。


 最近は少し昔(昭和時代)を愛おしむ映画や作品が流行していますね。
 それはきっと何も無い時代の頃、人と人が繋がりあって、それで生きていけた時代をうらやましく思っているからなんでしょうね。
 それでももうすぐ世代が入れ替わり、そんな時代を知ることの無い人たちが生きていくんですね。
 それはなんだか、寂しい時代になりそうです。

 憂いていても仕方ないんですがね。(笑)

 唯、貴方の拍手はそんな愛おしい時代の温かさを感じさせてくれます。

 ありがとう。


秋の風と冬の風を双方に感じながら。




+end+
2007.10.26
















































@海鳴


 海岸をただ一人で歩いていた。
 他には誰にも出会わず、暑い夏の盛りだというのに不思議な光景だった。
 いや、それでもさっきばかりは人が居たのかもしれない。
 浜辺にはそいつらの残したパラソルやらゴミやら食べ物やらが、まるで主人の帰りを待っているかのように広げられていたからだ。
 けれども波の音しか聞こえないその海岸は、今、僕だけの海だった。
 波打ち際を歩くと、砂に埋もれてた足のくぼみに海水が押し寄せては引いていく。
 真夏の太陽は燦燦と照りつけているのに、暑さは全然感じなかった。
 一歩、また一歩と踏み出して、僕の心はだんだん海へと染まっていった。
 と、そこで低くすさまじい海鳴りが僕の傍を通り抜けて走った。
 振り返ると、さっきまで主人を待っていたなんだかんだが跡形もなく消え去っていた。
「あぁ、これが世界の終わりなんだ。」
 僕はそのとき初めて気がついた。




+end+
2007.07.01
















































A蝉時雨


 蒸し暑い夜。クーラーで冷えすぎた体は、翌日の学校生活に大いなる気だるさをもたらした。
 かといってクーラーなしでは寝られないこの暑さ。
 どうしたもんだか…。
 それでも夏休みが始まるまではぎっしり授業があるわけで。
 何だかんだ言いながらも学校に向かう俺。ちと情けない。
 学校の教室もクーラーが導入されている。一体温度設定はどうなってるのか…これはこれで寒い。
 体育(この時期は水泳だが)が終わった後の最初の一時間は、丁度良い疲れと眠気と乾ききっていない髪の毛が凍りつく寒さとで…とりあえず眠い。
 締め切られた教室の窓の向こうからは蝉達のこれでもかというぐらいの大合唱が聞こえるが…それですら優しい子守唄になってしまう。
 教師はなんで眠くならねーんだ?
 そう思って周りを盗み見ると、最低でも5・6人は机に突っ伏して気持ちよさそうに昼寝をしていた。
 俺は瞼が重くなってくるのを自制心だけでこらえていたが、気付けば授業は終わり、隣の席の奴にたたき起こされた。
「次、移動教室だぜ?」
「おー…サンキュー。」
 眠い目をこすりながら準備を済ませるとそいつと一緒に教室を出た。
 何処の教室へ行っても、蝉の合唱もクーラーの度合いも変わらず、結局俺はほとんどの授業をまどろんでいるか完全に意識が飛んでいるかして過ごすことになった。




+end+
2007.07.01
















































B朝顔の観察日記


 壁沿いに並べた朝顔の鉢を、僕は満足そうに眺めていた。
 毎年この時期になると、去年取れた種を植えて育てるのが年課になっている。
 一番最初は小学生の頃だったと思う。この時はただ学校の教育の一環として朝顔の観察日記をつけさせられていただけだったけど、その時から毎年新しく取れる種を使って何故か朝顔を育て続けている。
 何故朝顔なのか。
 それは簡単だ。
 ほとんど手抜きでも勝手に育つからだ。
 いつだったか種を取り忘れていたままにしていたら、そこから勝手に芽を出して秋ごろもう一度花が咲いたこともあった。
 それぐらいたくましい花なのだ。
 面倒くさがりの僕が毎年育てられるのもそういったところにあるのかもしれない。
 けれども、最初の芽がでるまではとにかく気をつけて水をやることにしている。
 この芽が出てくれないと、僕は何故か僕自身が人間として全然駄目の成ってない人間のように思えるからだ。
 僕はこの朝顔を通して、僕という人間を試しているのかもしれない。
 そんな訳で今年も夏がやってきた。
 僕の家の壁沿いには、朝顔の鉢が並ぶ。
 今年の育ち具合は…
 今は未だ、順調だ。




+end+
2007.07.01
















































拍手挨拶


(side:A)

愛おしい想いが やがて鬱陶しいに変わる。

 拍手ありがとうございます。
 初めましてな方は初めまして。そうでない方はこんにちは。
 ソラノムクロです。
 夏の暑さと湿気が、感情を苛立たせる今日この頃如何お過ごしでしょうか?
 いつもながら拍手を下さる皆様にとても感謝しております。
 扇風機の頼りない風で凌ぐ暑さは、日照りの中日傘を差して歩き回るのと同じぐらい辛く厳しいものです。
 なら、クーラーでもつけちゃえよ。
 そうは思うのですが、なかなか手前勝手な意識がそうはさせてくれません。
 つまり電気代節約と、少しでも温暖化防止に繋がれば一石二鳥という意識です。
 扇風機って素晴らしい!
 そう思い込んで早5年ぐらい。
 その頃から暑さは厳しさを増すばかりですが、未だにクーラーが使われたことはありません。
 なら寝苦しい夜はどう過ごすのかって?
 決まってますよ。
 クーラーを使って快適に寝ている親兄弟の部屋に布団を持って突撃するだけです。(笑)


灼熱の太陽に焼かれながら。





+end+
2007.07.01
















































@ストーブ


 しんしんと音を立てて湯煙を上げるやかんをぼんやりと眺めながら、黒いコートを着た少年はみかんを頬張っていた。
 適当に整列された教室の机の上に乗っかり、別の机に靴を履いたままの足を乗せ、みかんの白い筋を床の上に落としながらみかんを頬張る姿は、何と言うか異様で、不思議な光景だった。  窓の外はもう夕暮れで、グランドで馬鹿みたいに元気に走り回っていたクラブ活動員の姿は無く、ただ静かな空間にしんしんという音だけが横臥していた。
 黙々とみかんを食べ続ける黒コートが座る机の真向い、ストーブに一番近い位置にはブレザー姿の同い年の少年がすーすーと寝息を立てながら眠っていた。机の上には最終授業の国語のノートと教科書が出しっぱなしで、その上に覆いかぶさるようにして寝ている。状況から判断するに、授業中から一度も起きていないことは明白だった。
 一つ目のみかんが終わって、二つ目を手に取る。
 全部で五つ入ってるみかんは、昼食時に寝ている少年が黒コートにお土産として渡したものだった。愛媛出身なのだろうか。
 相変わらず黒コートは黙々と皮をむき、一粒ずつ味わうようにして食べている。
 多分、彼が起きるまで待つつもりなのだろう。

 だんだん夕焼け空が夜色に染まり始めてきた。

「食べ終わるまでに起きなかったら…放って帰ろう…」

 しんしんとストーブだけがその呟きに返事を返した。  



+end+
2006.11.22
















































Aこたつ


 街を歩けばクリスマスソング。
 人々のポケットにはカイロ。
 そして、目玉商品は…こたつ。

 ホームセンターや大型電化製品の広告をみながら、少年はうなり声を上げ続けていた。
 もちろん目当てはこの時期の必需品、こたつである。
 大安売りで2990円。高級品になると零が増える増える。ピンからキリまであらゆるこたつを見ては、自分の今月の給料と照らし合わせてうなっているのである。
 こたつを買えば冬はあったかい暮らしが保障される。だが、こたつを買えば生活費を大幅に削ることになるうえに、電気代が…どうなるか予想もしたくない。
「あー、誰か俺にタダでこたつをくれぇ〜」
 そう言ってみたところで、勿論返事は無い。
 大体、こたつを買ったところで、その他にこたつ布団やらも購入しなければならないわけで…
「こいしー。こたつでみかんー。」

 一人暮らしを始めて一年目の冬。
 彼は改めて冬の厳しさを思い知るのだった。




+end+
2006.11.22
















































Bカイロ


 雪でも降りそうなほど寒い、そんな街を歩いていた。
 朝の通勤ラッシュの時間帯。周りにはおんなじ様な制服姿の学生や、サラリーマンなどで溢れかえっている。
 誰もが白い息を吐いて、足早に進んでいる。
 例に漏れず、俺も早く学校のストーブを占領したくて、早足で歩いていた。
 俺の席は幸運なことに、ストーブのまん前なのである。
 今から行けば十分に暖まった教室でほっと一息つけるだろう。
 突き刺さるような北風に、鼻を赤くしながら、俺は先を急いだ。
 と、後ろから誰かが俺を蹴飛ばした。
「あぁ?!!」
 ムカつき様に振り返ってみると、そこには黒いコートを着た同じクラスの奴が嫌な笑みを浮かべて立っていた。
「よっす。」
「よっす。ってか、蹴るなよ。」
「いや、気付かねーから。」
「だからって蹴るなよ!」
「わりぃ、わりぃ。これやるから。」
 そう言ってそいつが寄越してきたのは使い捨てカイロで…だけど、生ぬるいカイロだった。
「ずっと持ってるとさ、温もりが無くなって来てよ。」
「誰が使うかー!!」
 俺はカイロをそいつに向かって投げ返した。そいつはそれを軽くよけ、追いかける俺をからかいながら「つかまえてごらんなさぁ〜い」とか言いながら走り出した。
「恥ずかしいセリフ禁止!!!!!!」
 言い返しながら俺も走り出す。
 学校まであと数分。

 俺たちの朝は、冬の寒さに負けない温かさから始まった。



+end+
2006.11.22
















































@桜の木の下


 触れ合った肩
 振り向いた 貴方
 出会いは運命?それとも必然?
 自問自答
 何度も繰り返された

 通り過ぎた時間
 疲弊する毎日
 逢いたい想い
 重く積る

 踏み出した桜色の石畳
 咲き続ける春のシンボル
 運命なら
 また出会えると信じて
 何度も問い続ける
 再びはあるのかと

 触れ合った肩
 振り向いた それは貴方?
 運命を信じた
 私は愚か者か
 笑いたければ笑えば良い

 私はそれでも
 かまわない。

 息を呑む
 後悔は訪れない
 桜が散る石畳
 瞳に映る それは貴方
 散らずに今咲く
 私の心の恋の華
   



+end+
2008.03.22
















































A謝肉祭


 ぬくもりの太陽
 命の水
 大地の寝床
 木々の安らぎ
 闇の終焉
 風の歌声
 
 生き物のハーモニー

 今再び芽生えた季節に
 【おかえりなさい】を。




+end+
2008.03.22
















































B光る風の色<


 触れてみた
 私を取り囲むその流れに
 身体を預けて

 そっと息を吐く
 歌うように
 鮮やかに
 それにあわせて
 それは吹く

 暖かい中に
 涼しさを運んで
 季節の音色と匂い
 目を閉じて視える世界

 視える?
 その風の色が…。
 



+end+
2008.03.22
















































拍手挨拶


(side:A)

なぁ、世界は綺麗か?

 拍手ありがとうございます。
 初めましてな方は初めまして。そうでない方はこんにちは。
 ソラノムクロです。
 寒い冬が終わりを迎えようとしている。
 閉じられた足早の季節は緩慢な流れへと変貌し、コートのボタンは開け放たれた。
 けれどこの世界はまだ凍りついたまま、一歩も春へ進んではいない。
 いつまで閉鎖的なこの独房で生きるのだろうか。
 けれど此処から抜け出す方法を私はまだ知らない。
 低迷する日本社会。
 誰もが彷徨っているというのに、一体誰がその先を見つけられると言うのだろう。
 人間同士の小さな勝ち負けなど自然の前では無意味だ。
 無意味だ。
 無意味だ。
 金持ちを哀れもう。
 貧乏を哀れもう。
 どちらもこの地球の前では同じだ。
 共に滅びる運命よ。
 生き残るより、そのほうが幾分か幸せだ。




春嵐に目を背けながら。

*******************************************************************


(side:B)

嗚呼、それでも世界は綺麗だ。

沢山の拍手ありがとうございます。
この後はりょうにバトンタッチします。続けて楽しんでいただけると、そして拍手しまくっていただけると幸いです。


 この先、この世界は何年続くでしょうか?
 この先、私という個人はいつまで存在するのでしょうか?
 大方の思想の自由が赦されてるとはいえ、それでも創造の自由はいつも脅かされています。
 私たちの様な創造者には頭の痛い問題です。  個人的に勝手にやっているから、見逃せ。という理由では見逃してはもらえません。
 思想犯。
 私たちがそう呼ばれる世の中が来るのでしょうか?
 人間は変です。
 個性を求めるくせに、無個性を尊重する。
 一人が右を向けばそれにあわせて誰もが右を向く。
 だれか左を向かないか。それを期待しながらも右を向く。
 自分の思いを押し殺してまで。
 左を向けない世の中に、一体誰がしたのだろう。
 私は…きっと右を向くのだろう。
 左を夢に見ながら。



春風に心を奪われながら。




+end+
2008.03.14
















































@サマードリーマー


 虫篭と網を持った
 何処へ行こう?
 心に秘めた冒険心を望見しながら旅に出た

 照りつける 太陽
 夏だね
 羽ばたきが聞こえたら
 そこへ行こう

 何を捕まえる?
 何を捕まえる?

 踏み出したそこは緑の楽園
 木漏れ日の交響曲
 生命が音を立てる
 嗚呼 あれは何だろう?

 四枚の羽
 捕まえた
 妖精?
 僕を見て笑った

 僕の心
 囚われた
 妖精?
 君に恋をした

 虫篭は空っぽのまま
 その中に夢だけ詰め込んで
 僕はもう帰らない

 眠りから覚めるまで 
 



+end+
2008.07.23
















































A向日葵


「綺麗だね」

 君が言ったんだ。
 だから僕はまた此処に来た。
 一面に咲く太陽の丘。
 笑う君の顔を思い出して、泣きたくなる。
 どうして今、僕の隣に君が居ないんだろう。
 僕を見て微笑む君。
 君は僕の太陽の花だったのに。

 再びの夏が巡って、また君に出会えるだろうか?
 さよならは言わずに居なくなってしまった、天国の君へ。




+end+
2008.07.23
















































B夏のしわざ


 蝉の声を聞いて、学生時代の夏を思い出した。
 夏休みと言う大きな休みがあって、怠惰に過ごした日々を。
 今は仕事の日々におわれて、夏自体に実感が無い。
 こんなに暑くて、日に焼けて、汗だくになりながら会社に通っているにもかかわらず、何故かそれを実感できずにいるのだ。
 時間に置いて行かれてるのかもしれない。
 毎日時間に追われているのに可笑しな話だ。

 今日も無機質な顔をした大人と一緒に会社へ向かう電車に乗り込む。
 すれ違う若者は、皆、笑顔を貼り付けて“夏”を迎えている。
 羨ましいと思う反面、自分にもこんな時代があったんだなとも思う。
 でも、その頃はそれが当たり前で、こんなにも輝いているなんて思いもしなかったな。

 あー、久々に仲間に会いたいな。
 馬鹿やってはしゃげる時代は過ぎたけれど、たまにはそれも…いいかもしれない。




+end+
2008.07.23
















































拍手挨拶


(side:A)

独りで死ね。

 拍手ありがとうございます。
 初めましてな方は初めまして。そうでない方はこんにちは。
 ソラノムクロです。
 蝉が鳴き始めましたが、今一勢力に欠ける気がします。
 数が減ったのか?
 今一盛り上がらない感じで夏が始まってしまいました。

 夏!!
 
 と言えるほどの夏を実感しているわけで無く、だらだらと「あー、夏か…」と実感しています。
 こんな事をしているうちに秋が来て冬がきて春になり、また来年の夏がやってくるんだと思うと、一年とは何と短いサイクルなのか。
 年を取る早さを感じずにはいられません。
 まだまだ若いはずが、それでもどこか思考がずれているのでしょうか?
 一世代若い子を見ると、もう「最近の若い子は…」と言ってしまいたくなります。
 人を何とも思わない事件が増えてきていますので、すれ違う人間全てがナイフを隠し持っていそうで、恐いですね。
 
 少年は心にナイフを、少女は涙の武器を持っている。

 今ではこんなファンタジックな言葉も、オドオドしく聞こえるばかりです。
 けれど何故かそんな世界を愛しています。
 
 それだけで、幾分か楽になるのでしょう。
 まだ死にたいとは思いません。




暑さに扇風機で対抗しながら。

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(side:B)

生きるときは一緒

沢山の拍手ありがとうございます。
この後はりょうにバトンタッチします。続けて楽しんでいただけると、そして拍手しまくっていただけると幸いです。


 人の気持ちをわかる子になりなさい。
 よく言われた言葉です。
 素直だったのでしょう。そんな子供に育ちました。
 が、逆に相手がどう思っているのかが気になりすぎていつも怯えている子に育ちました。
 だったらどうしろと?
 あまりにしんどいので、大勢の人が嫌いになりました。
 だって、全員の気持ちを優先してやる事なんて出来ないのですから。
 でも、誰も要らないわけじゃない。
 寂しすぎて
 死んでしまうから。

 アナタに人の気持ちが解りますか?
 私は 想像できます。
 解るなんておこがましい。
 けれど、考える事はできます。
 きっと無いより、マシなのでしょう。
 今までそれで生きてこれたのですから。

 
熱中症の意味を考えながら。




+end+
2008.07.21
















































B曇夜に浮かぶ


 宇宙暦211005年秋の月最後の日。
 三年以上続いた隣国との戦争は、急激な物資の低下と戦力の減少で停止を余儀なくされた。
 互いに戦力の尽きるまで戦った為、最後は国王同士の一騎打ちとなり、平和的な方法(話し合いなど)で終戦が発表された。
 しかし、あまりにも長く戦争が続いた為、生き残った者は極わずか。
 そのほとんどが戦争に参加できない、老人・子供・女・病人。
 国を建て直そうにも、どうにもなら無い状況だったという。

「ちょうど今日の様に、葉がとても綺麗な色をつけて落ちていたよ。私はずっと待っていたその人に出会えたのも。」

 老女は語る。

「彼はね、まるで人形のように動かずに、じっと私を見ているの。その濁った目で、じっとね。ああ、彼は私に気がつかなかったんだろうか…。今でもそう思うのよ。私はそっと彼の頬を両手でつかんだわ。そしてあんまりにも冷たいものですから、じっと温めていたの。そうよ、そうよ。それでも彼は起きなかったわ。おやすみを言うと、彼は瞳を閉じて、そうして積もる葉の上へと倒れていった。それからは知らないわ。だって、私は彼を裏切ってしまったのだから。」
「生き残ってしまったこと?」
「そう。彼がいない世界を、生きてしまったの。どうしてあの時、一緒に逝かなかったのかしら…。いつも後悔していたわ。」
「どうして、グランマ。私はグランマが生きていてくれて嬉しいのに。」
「だって、彼とは別の人を愛してしまったんだもの。きっと誰でも良かったんでしょうけど、けれど、彼を死に追いやって私だけ幸せになるなんて…恐ろしいわね。」
「グランマは恐ろしくないわ、とても優しい女性だもの。」
「ありがとう、けれどいいのよ。それも今日で終わりだから。」
「グランマは眠ってしまうの?」
「そうよ、人間だもの。これでようやく全て終わらせることが出来るわ。」
「夢の中で彼に会いに行くの?」
「さぁねぇ。どうかしら。きっとこんなおばあちゃんでは気付いてもらえないわね。それでも会いには行けないわ。」
「恐いの?」
「違うのよ。それも少しあるけれど。今はもう私は彼の恋人ではないから、いけないのよ。」
「よくわからないわ。」
「そうね、よくわからないわね。本当はそんな事どうだっていいのかもしれないけれど、それでも私は愚かな人間だからそうする事でしか彼を守ることが出来ないのよ。だって今の私は彼の愛してくれた私では無いのですからね。」
「もっとよくわからなくなったわ。」
「いいのよ。これは私だけのものなのですから。さぁ、あなたはもうお帰りなさい。」
「グランマが眠るまで傍にいるわ。」
「悲しみが深くなってしまうわ。」
「いいの、大丈夫よ。」
「ありがとう、優しい子。そうそう、一つだけお願いがあるの。」
「なぁに?」
「あの窓を閉めてくれないかしら。カーテンもよ。今日は月が見えないからどうしても恐いのよ。」
「いいわ、大丈夫よ。」

 小さな少女はベットの脇から立ち上がって、そうして窓の傍までゆっくり歩いていった。
 その間にも老女の時間はみるみると消えていく。
 そして、少女が窓を閉め終わる頃には、その炎は消えて静かな眠りだけがそこにあるのだった。

「おやすみなさい、グランマ」

 そう言うと、カーテンが閉められた。
 外には雲の切れ間から月がのぞき、その照らされた明かりで一面に紅い葉が敷き詰められているのが見えた。
 光は一瞬で、後は闇に変わったが、その異様な紅を少女はカーテンの隙間から覗いてしまった。

 確かにその中には

「グランマ…お迎えが来たよ…」

 ああ、彼女の愛した彼の姿があったのだ。




+end+
2008.10.06
















































拍手挨拶


(side:A)

温もりが与えてくれるのは永遠じゃない。

 拍手ありがとうございます。
 初めましてな方は初めまして。そうでない方はこんにちは。
 ソラノムクロです。
 自由なんて言葉は何処の道端にも吐いて捨てるほど転がっていると言うのに、その自由を手にする為には今ある全ての価値のあるものを捨てなければならなくなってしまう。
 例えば、友人や家族。時には金や時間。そして、仕事も人生も。
 自由とはそれらを全て捨ててでも手に入れる価値のあるものだろうか?
 自由になりたいと私は言う。
 けれど一体どんな自由が欲しいんだい?

 そうだね…
 私は好きな物を食べて、好きなものを買って、好きな時に寝て、好きな時に働く。  そんな自由が、とても欲しい。




秋の風を肌に宿しながら。

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(side:B)

温もりはやがて、冷めてしまう。

沢山の拍手ありがとうございます。
この後はりょうにバトンタッチします。続けて楽しんでいただけると、そして拍手しまくっていただけると幸いです。


 息苦しさを感じる世の中に、何か一つでも生きる理由になることがあるでしょうか?
 ニュースなんて見るだけ無駄。
 殺人・誘拐・放火・汚職・詐欺
 バットニュースばかり、そこに光は落ちていない。
 映画の中ですら正義と悪は鬩ぎ合う。
 平和なんて口先だけにしか存在しない。
 なら、今ここで生きている意味って何?

 生きているから生きている。
 それは理由にならないかしら?

 
働くこと=お金の方程式に釘を刺しながら。




+end+
2008.10.06