POEM-2007
     ●恋歌
     ●忍語
     ●生キ急グ
     ●若鷹
     ●ここから。
     ●過去
     ●可能性
     ●生
     ●手紙
     ●no title
     ●足早の街
     ●例えば、それが生きる証なら。
     ●探し物















































恋歌


 今夜も貴方は私のしとねの横 煙管キセルくわえて髪を撫でる
 窓枠に射す月明かりの灯火ともしび 漆黒のとばりを切り裂いて照らす
 息遣いさえ聞こゆる 荒々しい夜に
 それでも 貴方は ただ私の傍に在る

 抱いてくれてもいいのよと 穢れた体を差し出せば
 悲しい顔で 抱きしめるだけ
 頬に当てられた手が 震えてるのは 何に怯えているの?
 心は明かさず ただ私をと 額に口付けを落とすだけ

 朝日と共に貴方は去り 夕闇と共に私を買う
 言葉は意味を成さぬまま 貴方の胸に消えて行く
 穢れているのは同じだと 語った貴方が契りを結び
 いつかこの格子の外 自由という世を見せてくれると
 指を絡ませ 囁いた

 今宵も貴方を待ち侘びる
 他の誰に抱かれても 心はいつも貴方と共に
 叶わぬ願と知りながら 絡ませた指の温もりを
 今宵もこの胸に秘め 格子の内で貴方を探す


















































忍語


 月が欠けて行く 闇の中から呼ぶ声
 優しい瞳が流した涙 今 くれないに染まる


 其々それぞれの想い忍ばせて 牙を隠す獣の咆哮ほうこう
 流るるままに生きることが この現世うつしよでただ息苦しいと
 もがいた手 の指先は
 辿り着けはしない未来への希望を 絶望へと変えていく

 出逢った命の償いとちぎり 死にたがりが求めた墓場
 馬鹿な奴と とがめるの声が ただはかなすぎると
 信じた 幸せの在処ありか
 飛び散る戦いの水面みなもに 波紋はもんを広がらせていく


 嗚呼
 月が欠けてく 無音むおん 風がいで
 息を止めた 自分の鼓動こどうだけ ただ五月蝿うるさくて
 夜がどうして こんなに悲しいのか
 出せない答え 舞い散る木の葉に乗せて流そう
 黄昏たそがれが今はだ 終わらないから


 く旗は 無名の王冠を背負い
 浮び上がる残酷な泡が 傷跡に深く爪を立てる
 逆周りの互いの人生は
 誰のレールの上で踊らされた 証?
 今は冷めた瞳が語る

 とざした道をじ開けて その先の虚空を生きるぐらいなら
 もう戻れなくて良い その掟と綱渡りをしよう
 この夢の居場所は
 何処にも存在しない 乱されたこの世界には


 嗚呼
 月が欠けて逝く 心音 時が凍って往く
 血に濡れて 尚も守りたい それが唯一の誇り
 夜がどうして こんなに重く冷たいのか
 出せない答え 落ちる砂時計の針に戻そう
 悲しみが今はだ 終わらないから


 譲れない事が有るから 守りたいものが在るから
 この先の一歩を この闇の続きを 求めずには居られない



 嗚呼

 月が欠けて逝く 涙雨るいう 心が枯れて行く
 優しい瞳が流した涙 今 紅に染まる

 嗚呼

 月が欠けて逝く 無音 風が凪いで往く
 夜がどうして こんなに切ないのか
 出せない答え 消炭の心に燃やそう
 運命さだめが今は未だ 終わらないから

 この夜が 今は未だ

 終わらないから…

新江戸人情記*don-side

















































生キ急グ


 友達との会合よりも
 財布の中身の心配
 恋人との逢瀬よりも
 自分の空間の確保

 嗚呼
 難しきこの世
 難しき人付き合い

 一滴の雫の落ちる
 その僅かな時間すら惜しんで
 駆け回る
 早送りの時計の針

 嗚呼
 難しきこの世
 難しき生きる未来

 嗚呼
 難しきこの世
 難しき心遣い


















































若鷹


残酷なまでの愚かさ その欠片に聡明な頭脳を隠し
直向ひたむきなまでに生きた 過去と言う歴史の中
出逢ったその全てが 意味いろの無い虚ろな魂を捧げ
この世の中で 欲しいと思うものは 何一つ存在しなかった

手に入らないものなんて 何もなかった
だから 願うままに欲を満たした
人間らしい生き方が その人間性を滅ぼすことを知りながら
溺れる大海のその深い深淵で 独りぼっちで泣いてる
誰かがいたけど 踏み潰した

心なんて意図も簡単に 操ってしまえると 気付いた
悲しみも 喜びも 怒りさえも
何も感じない人形ならそんなことさえ羨ましいのか?
ただ 作り出される感情は 一体誰のものになる?
本当に それが自分のものだなんて
どうやって信じれば良い?

その答えは 踏み潰された誰かが持っていた

それは確かに 自分自身の 本当の声

嗚呼 けれど
結局 信じられるのは 自分だけ

塵溜のように増えていくばかり 他人の存在が息苦しい
束縛の権利 約束の定義 
どれも夢物語 その行く先の続きの如く
甘い言葉囁くだけで 息が詰まりそうだ

その闇を逝く 鎖に捉えられた存在が憎らしい
軽く舞うように縫う 人と人との間
呼吸さえも 簡単に すり抜ける
そんな 翼を持ちながら
何故 地上に這いつくばって生きるのか?
行き方の違い 価値観の相違
その全てが 違いすぎて
ただひたすら 憎らしい

きっとこの地を歩く烏は
翼を持たずに 声を殺して生きている
狂気を 殺して生きている
そんな存在おれを 知らずにいるのだろう

翼を求めていることを
きっと知ることはないのだろう

だからこそ 憎らしい



それはつまり 羨ましい


新江戸人情記*yosi-side*2007.07.08

















































ここから。


夕焼け空の その向こうの闇
見据えて 踏む影
ひとつ ふたつ

手をつないで歩いた あの坂の道で
今は 唯独り
生き急ぐ

あの頃の抱えきれないほどの夢
それはとっくにこの腕から零れ落ち
今は現実のしがらみ
引っ掛かったまま なびいてる

枯れるくらい 叫んだ
この声なんて 捨てて
枯れるくらい 泣いた
この涙も 捨てて

動かないこの足が
掴まないこの腕が
飾りだと唄うなら
今すぐにでも 捨ててしまおう


帰るカラスの羽ばたきの その空の向こう
輝く星空も
今日は雲隠れ

点けた煙草の明かり
煙が昇る前に
降り出す雨に 掻き消えた

苦しいぐらい 求めた
この望みなんて 捨てて
苦しいぐらい 望んだ
この願なんて 捨てて

見もしないこの瞳が
聞きもしないこの耳が
飾りだと唄うなら
今すぐにでも 捨ててしまおう



いつかは 終わるはずの夢なら

ここで 今すぐ 終わらせて…



枯れるくらい 叫んだ
この声なんて 捨てて
枯れるくらい 泣いた
この涙も 捨てて

動かないこの足が
掴まないこの腕が
飾りだと唄うなら
今すぐにでも 捨ててしまおう

苦しいぐらい 求めた
この望みなんて 捨てて
苦しいぐらい 望んだ
この願なんて 捨てて

見もしないこの瞳が
聞きもしないこの耳が
飾りだと唄うなら
今すぐにでも 捨ててしまおう


















































過去


過ぎ去った遠い昔話は
今はもう 語り継がれることさえ止めて

扉を鎖したその先は
死んで地層となるばかり

その地層の一つ一つが
今を作る足場となるのか…

それは脆く不安なばかりか
それとも強固な壁と成るのか

それから先は
語られない。


















































可能性


待ち切れなくて 明日を携帯して家を飛び出した
何も怖くない 不安も無い
在るのは限りなく広がる ∞の可能性

羽のはえた生き物のように
浮かぶ身体、これは心か
今なら何処までも行ける
そう思えたんだ。

だけど今、

信じた自分の 握り締めた手の中
汗ばんで
駆け出したはずの足
やけに重くて

感じてる

これはずっと前から
その可能性を 否定してたこと




















































言葉で伝える勇気
どこかへ忘れてきた優しさ
生きるって こんなにも苦しい
それでもその苦しみが
幸せを教えてくれる

頑張る力
支えられる愛情
生きてるって こんなにも温かい
そのぬくもりが
生きる意味を 生きてる証を教えてくれる


















































手紙


書き連ねた文章は
要領を終えない稚拙さで
枚数を重ねた便箋は
最早作文の如き醜態で

伝えたい思いと
伝えるべき思いとでは
どちらを優先すれば
届くのだろうか?

切手を貼った その値段が
心の距離と時間の隙間を
埋めてくれる
代償となる


封じた
その後は他人任せで
届いた
その後も他人任せで

返事が来るのと
返事が来ないのと
どちらが解っていれば
より安心してその先を
待つことができるのだろう?


赤いポストが
今 飲み込んだ手紙
例えばそれが

永遠に君に 届かなければいいのに…


















































no title


周りに馴染めない
周りが馴染めない
ダメな自分
嫌いだから捨ててしまえ と
空き缶のように握りつぶした

求めた未来に
見捨てられた希望
道端に転がって
あの頃の輝きは もう
見当たらない

大人になる事が
こんなに淋しいなら
一生子どものままで良い
ピーターパンのように

泣きたいし 叫びたいし
怒りたいし 笑いたいし
誰だって幸せになりたい
こんな世の中だけど

楽もしたい お金も欲しい
恋もしたい 自由になりたい
廻る時計の針取り出して
だったら 時を 止めてみる?


吐き出した本音
嘘の塊にして強がったら
心に大きな穴が開いてた

道端に転がってる
誰かの希望
鉛のようなその塊を
強くこすったら
少し光った

大人になる事が
理解して受け止めるという事なら
子どもは大人になる
ウェンディーのように

泣きたいし 叫びたいし
怒りたいし 笑いたいし
誰だって幸せになりたい
こんな世の中だけど

楽もしたい お金も欲しい
恋もしたい 自由になりたい
廻る時計の針巻き戻して
やり直せる 何度でも


泣きたいし 叫びたいし
怒りたいし 笑いたいし
誰だって幸せになりたい
こんな世の中だけど

楽もしたい お金も欲しい
恋もしたい 自由になりたい
廻る時計の書き直して

やり直せる

いつも

ここから…


2007.09.21

















































足早の街


疲れた窓の外
今年は雪も降らない
コートも袖を通さないまま
このまま冬が終わる

温かいココアのかわりに
冷たいアイスクリーム
一つずつ浮かべるマシュマロのかわりに
さて、何をかけよう?

止まったままの時計の針
それでも世界は早回りしてる
追いつけないのは僕の心
歩くスピードは誰よりも早い
追い抜かすけれど
追い越せはしない


狂い咲く花の線路道
決して歩けはしないこのレール
眺めながら歩いたら
とりあえず似たような駅には辿り着いた

置き忘れてきたものの数と
忘却のかなたに置いてきたものの数
どちらも沢山あるはずなのに
今もまだ何か沢山のものを持っている

一秒一秒は同じ速さの時計
それなのに見る度
違うメトロノームの様
針と針の間に挟まれた僕は
身動きが取れない数字版
変わることの出来ない数字版


もう一度を願ったのは何度目だろう?
もう二度とを願ったのは何度目だろう?
108(ひゃくやっつ)の煩悩を払い落としても
まだ何億もの負債を抱えてる
幸せを手に入れたいと思ったのに
その幸せは手が届くと消えてしまう


疲れた窓の外
降り出した雨は冷たく
ポケットに入れた手が伝える
この世界の冷たさと温もり

彩るイルミネーション
ぼやけた視界のその先
見つめた世界に何が映る?

それでも今日も僕は早足で
この人ごみを追いかけて
何が映っているのかも
見もしないで生きている

見もしないで生きている

早送りの世界で

生きている








2007.11.12

















































例えば、それが生きる証なら。


死亡フラグ
絶望警報
希望惨々

この世の果てが私の未来なら
この抱え持つ柵すら断ち切って 尚
余りある煩悩は
この手のひらの中に 押さえきれずに疼く
頭痛の閃きを恍惚に浮かべた

その 表情
その 声
その 唇
その 身体

痛めつけるだけ痛めつけた
紅い血は 誰の優しさより温かかった
枯れるまで搾り出して
浸す 犯す
鼓動の度に 跳ね上がる振動
どくどく どくどく
咽る匂い もう纏わりついた
世界が
望んでる

ワタシヲ

欲シテル


欲望で溢れたこの入れ物は
誰も受け止められず
打ち付けられて 割れた硝子のように
鋭い切れ味でもって思い知らせる

渡さない
譲らない
抑えない
答えない

笑い声の木霊するこの狭い箱の中
在るのは唯 本物の存在感
動けない 白い艶かしさ
罪への禁忌を
世界が
呼んでる

ワタシガ

欲シテル

嗚呼…

一歩 
踏み出すたびに飛び散る鮮やかな
赤 紅 緋 アカ red
足跡を続かせる

先へ
闇の先へ
この世界の果てへ

これが生きる証と言うならば
どこまでも 続かせよう 足跡を…このAKAを。。。


2007.11.12

















































探し物


胸に響く言葉
今 探し続けてる
暗闇のようなこの常闇で
太陽の欠片を求めるように

かじかんだ両腕は
もう 腐り落ちた
青紫色に変色して
鉄屑の様に 腐り果てたのだ

付属品である所のこの身体は
凍りついたままでは 動かせない
けれど
他人という寒い眼差しが
凍てつかせたまま 心を止め続ける

青白く光る頬 撫でたその手も氷で
先から固まって逝く
ストーブの炎でも 溶かすことは叶わない
輝くイルミネーションは
死出の手向け花

一つ一つを消し割って
それでも 何も響かない
ここにも 太陽の欠片は無かったか…

今や 自分のぬくもりだけが 頼りだ。


2007.12.10